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「ふるさと納税」の返礼品提供企業は自立できているのか? [どう受け止めたらいいのか]

世の中に定着した感のある「ふるさと納税」。
平成28年度では、1,271万件、1,270億円に上るのだとか。
※出典:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」
平成29年度ふるさと納税に関する現況調査について」(2017年07月04日)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/topics/20170704.html


「返礼率や返礼品の見直し」が政府より指導されているようですが、少し気になることがあったので「ふるさと納税」についてのレポートをいくつか読んでみました。
多くのレポートが「ふるさと納税」歓迎基調ながらも課題を記してあるという状況です。

少し整理しておかなければいけないのは、

1.「ふるさと納税」とは

●自分の選んだ自治体に寄附(ふるさと納税)を行った場合に、寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です(一定の上限はあります。)。
※出典:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/about.html
http://www.soumu.go.jp/main_content/000254924.pdf
ということで、そもそも実態は「皆さんが納める税金の一部」なのです。


2.企業の収益構造は

売上ー費用(コスト)=損益

という図式になっています。

費用(コスト)の主なものは、「人件費」「原材料費」「光熱費」等があります。
もし、返礼品提供企業(事業)の売上の大半が「ふるさと納税用返礼品」の納品だとすれば、皆さんの税金がこの企業(事業)の売上の大半になっているということです。

さらには、皆さんの税金がこの企業の従業員さんの給料や社会保険料や税金にも変わっているということを意味します。
なぜなら事業の経費(コスト)は売上によって賄われているからです。

もっと言うなら、その際発生する消費税も皆さんの税金で支払われている(税金で税金を支払っている)のです。

もっともっと言うなら、窓口となっている自治体の職員さんの給料や社会保険料や退職金も皆さんが納めた税金で賄われているのです。


3.「人手不足社会」にわざわざ「税金」を施すようなことまでして「ふるさと納税返礼品」を作る必要があるのか?という素朴な疑問が湧いてきます。

「都会と地方は違う」という議論は確かにありますが、統計調査的には日本全国で人手不足が生じており、その人手不足を埋めずして「税金でビジネス(事業)を行う」必要があるのか!と考えたくもなってしまいます。



つまり、ワークシェアリング(仕事の分担・分かち合い)を考えずに光を当てるようなことばかりしていたら、そのうち行き詰ってしまわないか!ということを私は言いたいのです。

私は必ずしも「ふるさと納税」に反対するものではありませんが、

①「地方・地域の活性化」という耳にやさしい言葉を使って「税金頼りのビジネス」が水膨れになったままにしておいて、「税収が足りない」「税率を上げる」という理屈がよくわからないのです。

②「地方活性化」のための産業振興、雇用拡大のための助走期間と言うにはあまりにも迎合的すぎるのではないかと思うのです。



「ふるさと納税」制度を続けるとするのなら、
●「返礼品」を廃止する
●返礼品提供企業の連続採用を制限する
●返礼品提供企業の売上に占める返礼品売上比率の上限を設ける
等を併せて行わないと、「税金」頼りのビジネス(事業)が続くことになり、企業として自立できないままになってしまう懸念があります。





(参考)
〇「ふるさと納税による地方の事業者育成支援効果」(神戸大学保田隆明准教授)
・・・国民経済雑誌 第 216 巻 第 6 号 抜刷 平 成 29 年 12 月

● その市場規模は拡大している
●返礼品経済圏は地方経済を下支えする存在となりつつある
●地域の社会福祉活動との連携や, 産官金連携を通じた, 地域の経済力の強化につながるきっかけにもなりつつある

● 数多くある返礼品の中から 選ばれる存在となるよう企業努力をしている。 商品のラベリング, 梱包, 出荷の現場では, 地元の子育て世代の主婦が10名程度働いており, 地域での柔軟な働き方での雇用の創出につながっている

●日本全国の返礼品を提供している企業の, いわば 「ふるさと納税特需売上」 の総額となる。 その大部分は, おそらくはふるさと納税がなければ発生しなかった売上であり, 官製需要と言える
● もし返礼品経 済圏を官製需要と呼ぶならば, その結果として, 地域内にどの程度の売上や消費が発生し得たかという数値であり, もしふるさと納税の制度が終了した場合には消滅する数値とも言える

● 地域の事業者のビジネス力やスキルの向上という事業者の成長や発展がなければ, ふるさと納税は単なる税金の地域間移転によるモノの買い上げ, すなわち, 一時的なバラマキとなんら変わらない
● 今後はまさに企業努力のもと創意工夫を凝らした事業者のみが, 健全な競争のもと返礼品市場において選ばれる存在となっていく。 その流れがうまく形成されれば, ふるさと納税は各地域の事業者の育成道場の役割を果たしうる

● 宣伝広告や顧客からの注文受付業務は自治体が行ってくれるため, 通常の通販に比べると事業者側の負担は少ない。 中には, 商品の梱包, 発送業務も自治体が担ってくれるところもある


〇「産業振興策として捉えるふるさと納税」(大和総研 金融調査部 鈴木文彦主任研究員) 
・・・日経グローカル No.329 2017. 12.4
https://www.dir.co.jp/publicity/magazine/gdp1m8000003l0op-att/17121802.pdf

●キャッシュの流れに着目すると、ふるさと納税は、ふるさと納税と称する寄付金を財源に、自治体が地元企業に返礼品を発注するシステムだ。形を変えた公共事業、補助金とも言え る。


〇本当に「ふるさと納税」は地域のためになっている?【さとふる社調査】(2018/02/16 ECのミカタ編集部 )
・・・ECのみかた
https://ecnomikata.com/ecnews/17912/

●多くの寄付者が「ふるさと納税は地域のためになっている」と考えているのとは裏腹に、ふるさと納税制度に対する制度そのものへの批判や疑義を含む議論が活発化している
●公金たる寄付金を地方の産品を提供する事業体に送り込む形になり、事業者が寄付金だよりになって、補助金に頼り農業が国際競争力を失ったように、かえって地方の力を衰えさせているとの指摘もある
●各自治体が返礼品競争に追い立てられる中で、返礼品に関する事務など事務経費がかさみ、結局、各自治体の手元に残り、有効に使える寄付金はごくわずかだという点を問題視する議論も多い



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