「経済効果〇〇〇億円」という机上の空論 [どう受け止めたらいいのか]
イベントや商品などの成功を見込むと「経済効果〇〇億円」などと言う話をなさるマスコミがあります。
本当にこういった「経済効果」は実現しているのでしょうか?
たしかに虫眼鏡で見るようにそのコトやモノだけを取り上げてみると確かに経済効果があったかのような気になるのは事実ですが、丁寧に考えてみると、
1.「日本」以外の人が消費しないと「日本国内の経済効果はない」
「経済効果=売上増」だと考えると、日本人個々のお財布の中を見ると、
〇所得が増えない限り、
①預金を崩す
②借金をする
③ほかの消費をやめる
ことがないと、資金は産まれていません。
こういう状況で経済効果があったと呼んでもいいのでしょうか?
おそらく資産負債の状況が変化したか、他のご商売の方の売上減を産んでいるはずです。
日本の高度経済成長が「輸出」の恩恵だったことやアベノミクスの柱の一つに「インバウンド観光政策」があることの意味がよくわかると思います。
2.一時的な「経済効果」はコストアップになるだけ
たとえば、「一時的な経済効果120億円と毎月の経済効果10億円ならどちらがいいのか?」というテーマで考えてみてください。
たとえば「ホテル」というビジネスだとわかりやすいと思います。
一年間の経済効果(売上増)という見方をすれば「一時的な経済効果120億円」と「毎月の経済効果10億円」なら年間の経済効果(売上増)は同じ120億円です。
ところが、コストを考えると少し変わってきます。
●「一時的な経済効果120億円」のためには客室を120億円分用意しなければいけませんが、この時期が過ぎてしまえば空室ばかりになってしまいます。
つまり客室の稼働率(回転率)はものすごく悪くなってしまいます。
ところが、「毎月の経済効果10億円」のためには客室は10億円分の用意で足ります。
おそらく客室の稼働率(回転率)は高く、資金的にも随分助かります。
●「一時的な経済効果120億円」のためには従業員を一時的に120億円分用意しなければいけませんが、この時期が過ぎてしまえば従業員はやめてもらわないといけません。
つまり常用雇用では対応できないので、非正規的な季節労働者(パート・バイト)に頼ることになってしまいます。
この時期は他のホテルでも従業員ニーズが高まりますので、パート・バイトと言えども賃金は高騰してしまいます。
他方で、季節労働者ですから「労働の質」が高まらない恐れがあります。
ところが、「毎月の経済効果10億円」のためには従業員は10億円分の用意で足ります。
つまり、毎月コンスタントに従業員が必要ですから、従業員の安定常用雇用につながります。しかも熟練度も高まるはずです。
この二つの例でも、「一時的な経済効果の魅力というのはそれほど魅力的でもない」と言えそうです。
「マスコミ」は「キャッチ―なことを好む傾向」がありますが「経営」というのは「継続的に経済効果」を享受することが望みたいものです。
現場では「平準化」と言えば当たり前のことになっています。
つまり突出した売上増や売上減ではなく、「安定的に売上が推移していくこと」または「費用が均てん化されていること」が期待されているので「均す」(ならす)という行動をとります。
●経済効果はあるはずなのに景気が持続しない
●経済効果があるはずなのに安定雇用にならない
ということの一端はこういうところにあるのです。
忙しいだけで「儲からない」という側面も顕在化してしまいます。
マスコミの皆さん。政治家の皆さん、テレビでかっこよくお話になる皆さん等々いかがご考察なさいますか?