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「政府統計」の不正・手抜き・手抜かりと「家計調査」 [どう受け止めたらいいのか]

ここのところ「毎月勤労統計」(厚生労働省)の不正問題が話題にならない日はないようです。
がしかし、私には深刻度や深刻さが伝わってきません


「不正」「不正」と騒いでいらっしゃるけれど、

1.積極的な不正

ねつ造」と言う言葉がぴったりですが、本来の数字をでっちあげるようなものやこと。


2.消極的な不正

多忙・面倒くさい等の事情による「手抜き省略」が代表的です。
「ねつ造」とは少し趣が異なり調査が不完全なものです。


3.調査の限界

あまり語られていませんが、「消費が振るわない」と言う根拠となる統計調査の代表的なものに「家計調査」(総務省)と言うのがあります。
調査結果は毎月公表されていますので、その結果にマーケットやマスコミも一喜一憂することも多いようです。
しかしながら、この「家計調査」も調査事情や公表数字の理解には限界があるようです。

という切り口で整理していく必要があります。
議論の行方次第では「人員不足」と言う方向付けになってしまう恐れもあります
これほどまでにAI・ITが進んだ時代ですから「人員不足」に塗されてしまったら「なんだかなぁ」です。



私の知るところでは、この「家計調査」には「手抜かり」(調査の限界)があります
この調査は法定統計で罰則規定もありますが、その内容を丁寧にご存知な方は少ないと思います。

例えば、

「家計」とは「一軒の家族の所得・消費」を調査するものです。

したがって調査では「夫婦共稼ぎ」とか「お子さんが働いていらっしゃる」場合はすべて合算しなければいけません。
本当に合算できますでしょうか?
「特に何に使ったのか」という部分などアバウトになりがちだと思います。


所得よりも消費に重きを置かざるを得ない

サラリーマン世帯(統計では勤労者世帯という)の所得は比較的わかりやすいのですが、自営業者の方の場合は所得が補足しずらいという課題も見え隠れします。


消費支出の品目の定義に留意する必要がある

「〇〇市はコーヒーをよく飲む」「〇〇市はカレーをよく食べる」と言うようなことがよく語られることがありますが、「コーヒー」や「カレー」の定義を確認する必要があります。

「家計調査」(総務庁)の品目分類を見ると、

「コーヒー」とは、「飲料」の項目の小分類で、
粒,か粒,粉末,固体のもの。
○ トラジャ キリマンジャロ コロンビア モカ
○ カフェオレ カプチーノ
○ インスタントコーヒー

であり、喫茶店やレストランで飲むコーヒーは含まれていません
それは「外食」の小分類である「喫茶代」(飲物(酒類は除く。),菓子及び果物の外食。)の項目に計上されています。

「コーヒーをよく飲む」話が「実はインスタントコーヒーをよく買う」と言う話だったりするのです。



④「品目別消費支出」のランキングは「品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市」についてであり「都道府県」のものではありません


「家計調査」は「誰が支出したのか」であり「どこで支出したか」ではありません
横浜市の人が福岡市の喫茶店でコーヒーを飲んだら「横浜市」の統計数字に計上されます。


⑥いわゆる「消費」を数字で語るには「家計調査」のようなアンケート調査だけではなく、「住宅着工統計」「自動車販売統計」「チェーンストア販売統計」「百貨店売上統計」などの売り手の側のデータと合わせ読みとく必要があります


お店のレジに並んでいる人には「自然人・法人の区別」はありませんが、「家計調査」は自然人だけのアンケート調査であるという点にも注意が必要です。

したがって「(小売り)販売統計」での検証が必要となってくるのです。


「販売統計」は「売り上げを計上した場所」の数字ですから地域性は販売統計をみないとよくわかりません。

東京の人が青森で青森ナンバーの自動車を買えば、「家計調査」では「東京」の数字になり、「自動車販売台数」では「青森」の数字になります。


「政府の統計」には、このように定義が明確です。
●その統計は何を表しているのか?
●その統計はどういう仕組みでできているのか?
●その不正はなぜ起こったのか?
と言ったことも併せ考えないと今回の「統計不正」の「再発防止策」はうまく策定できないはずです。


(参考)
家計調査
・・・・(出典)総務省統計局ホームページ
 家計調査は,一定の統計上の抽出方法に基づき選定された全国約9千世帯の方々を対象として,家計の収入・支出,貯蓄・負債などを毎月調査しています。
 家計調査の結果は,これら調査世帯の方々の御理解・御回答によって得られており,我が国の景気動向の把握,生活保護基準の検討,消費者物価指数の品目選定及びウエイト作成などの基礎資料として利用されているほか,地方公共団体,民間の会社,研究所あるいは労働組合などでも幅広く利用されています。
https://www.stat.go.jp/data/kakei/

 勤労者世帯及び無職世帯については,日々の家計上の収入及び支出が,個人営業世帯などの勤労者・無職以外の世帯については,支出のみが「家計簿」により調査される。世帯及び世帯員の属性,住居の状態に関する事項等は,すべての調査世帯について「世帯票」により調査される。
https://www.stat.go.jp/data/kakei/1.html#kakei_4

 家計調査は,国が行う重要な統計として,「統計法(平成19年法律第53号)」による「基幹統計」に指定され,統計法に基づいて公布された「家計調査規則(昭和50年11月12日総理府令第71号)」に従って調査を実施している。



統計法
第六十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第十三条の規定に違反して、基幹統計調査の報告を拒み、又は虚偽の報告をした者
二 第十五条第一項の規定による資料の提出をせず、若しくは虚偽の資料を提出し、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者
三 第三十六条の規定により匿名データの提供を受けた者又は当該匿名データの取扱いに関する業務の委託を受けた者その他の当該委託に係る業務に従事する者若しくは従事していた者で、当該匿名データを、自己又は第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用した者


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