SSブログ

日本の山林と林業政策 [どう受け止めたらいいのか]

「紅葉」の話題が伝わってくる季節になりました。
こういう時は「山」とか「山林」に思いを馳せる方も多いと思いますが、「スギ」と聞くと何を思い浮かべますか?

今では「花粉症」ですっかり有名になった「スギ」ですが、日本各地を車で走ると「杉林」が多いのに気づかされます。
※「ポツンと一軒家」の周りにもスギ林がとても多いようです。

あるいは九州を襲った豪雨(九州北部豪雨(H29年7月)による土砂崩れでは「スギ」の木が崩れ落ちる光景をテレビが伝えていたはずです。

※私は「スギ」「マツ」「ヒノキ」の区別はできますが、広葉樹の区別はできません。


日本中の山林のかなりの部分を覆う「スギ」「ヒノキ」は、太平洋戦争直後の昭和20年代~40年代に植えられたものが中心でしょう。
ネット記事を検索していると、
日中戦争や太平洋戦争などによって大量の木材が軍需物資として消えたという事情がある。加えて、主要都市が戦争による木造住宅の損失被害を受けて、莫大な量の木材需要が発生。日本の山林からは、大量の木材が伐採された。
こうした木材不足を補う目的で始められたのが、国を挙げての造林だった
ようです。

しかしながら、なぜ「スギ」だったのでしょうか

●住宅用材として木材は欠かせなかった
●かつてはトラックの荷台やバスの床は木材製だった
●電信柱(電柱)にはスギ材が使われていた
●「杉葉」や「端材」は燃料用に使われた
●「杉皮」は屋根材として使われていた
という事情があったのかもしれませんが、終戦直後の需要というよりも、50年後ぐらい先のニーズに応えるものだったはずです。


「スギ」は「成長が早く40年程度で成木となり、伐採適齢期を迎える」らしいのですが、昭和94年の今は日本中いたるところに「伐採適齢」の「スギ」が育ち、材木業者の元気のいい声が聞こえているはずです。
ところが「製材所」なるものは見つけるのが難しいような状況です。
「木材」や「材木」を積んだ平積みトラックもあまり見かけません。


なぜ日本のスギやヒノキなどの木材が使われなくなったのか?」と事情通の皆さんに尋ねると、
●安価な輸入外材に取って代わられた
●住宅建築の洋風化
などを挙げる人が大多数を占めますが、


私が思うのは、
復員兵士の就職の場として「山林」(植林)が選ばれた
住宅用材として「スギ」「ヒノキ」をメインに考えたのは不思議。
~主に「スギ」は板材、「ヒノキ」は構造材ですが、この2種類が大量に植えられたのは不思議です。「柱」には「ケヤキ」や「カエデ」なども使われているはずです。
●大工さんによれば、「スギ」「ヒノキ」は加工しやすいとのこと。
●「スギ」はまっすぐに伸びることから「電信柱」用途も当初から想定されていたはず。
●「外材」が安価というよりも、日本の「スギ」「ヒノキ」の場合は、
よくこんなところに植えたなと言う急峻な斜面にも植えてある
「急峻な場所での作業」は機械化も遅れ、命がけの仕事になってしまいます。
「下草刈り」「枝打ち」「間伐」と作業工程が多すぎる
等々です。

「紀伊国屋文左衛門」の成功からちっとも抜け出せていなかったのではないでしょうか!


ときどき「『花粉のないスギ』の育種に成功した」的なニュースが報じられますが、日本中のスギやヒノキを切り倒して植え替えない限りその効果は即効的ではありません。


そもそも、
「スギ」や「ヒノキ」をまた植えるのでしょうか?
住宅用材としての「スギ」や「ヒノキ」の用途やマーケットはいかほどでしょうか?
●「サクラ」や「カシ」や「クルミ」なら床材や家具材としてもその用途は広がりつつあるようです。


「森」だとか「森林」だとかと囃し立てる皆さん
●「針葉樹」とか「広葉樹」の区別
●造林コスト
●産業としての林業
●「保水」「治水」などの役割の位置づけ
のことをご存じなのでしょうか?


林業が盛んな地域の皆さんに話を聞くと、
●「うちの〇〇杉は品質がいい」
●「植林してもシカなどが食べてしまうという獣害がひどい」
●「自伐型林業」では食べていけない
●そもそも「働き手がいない」
という話しをよく聞きます。


「造林」に詳しい大学教授に「いつまでスギを植え続けるのか?」と聞いたところ、彼は「お役所は頭が固いので」という行政スタンスの話をなさっていました。


この先生には、かつて慶応大学商学部の井原哲夫教授から私が聞いた、
『あなたいいもの着てるわね』という言葉の持つ意味は『いい素材の衣服を着ている』という意味でしたが、昭和60年頃を境に『着こなしがいい』という評価に変わっていった
という話しをしたら当惑なさったような顔色になられました。

木材にもこういう評価が強くなっているのではないでしょうか?


ところで先日焼失した「首里城」ですが、「木材」で建て直す必要があるのでしょうか?
基本構造はコンクリートで見える部分を木造にする」ということでもいいような気がします。


過日、青森・秋田を旅した時、「『高気密・高断熱』の家がいい」とおっしゃる方がずいぶんいらっしゃいました。
「木の家がいい」という声は聞こえてきませんでした。

今後の「建築素材」の過不足なども踏まえつつ「木材」の用途を吟味しながら「山林」政策「林業」政策を考えてみたらいかがでしょう。

山にスギやヒノキを植えまくる」ことが必要なのかという素朴な疑問の答えが出てきそうです。


<参考>
日本国民が払わされかねない林業政策のツケ
(2017年12月25日「東洋経済」)
https://toyokeizai.net/articles/-/201820


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事