「保証人になることの意味」を保証人に教えなさい(保証人意思確認を義務化) [銀行(員)と付き合う法]
「銀行に家を取られた」
などという話をお聞きになったことはありませんか?
私も若い頃、ある企業の社長の奥様から、電話口で涙ながらに「銀行に家を取られた」と言われてしまったことがあります。
事業(ご商売)に一切タッチされていない奥様でしたから、こういう話が口をついて出たのだと思います。
実情は、
①どこかの銀行から融資を受けた(お金を借りた)。
②業況不芳で、融資金(借入金)が返済できず、融資の条件として社長の自宅(土地・建物)を担保に取っていたので、その家を処分して(もらって)融資金(借入金)を返済してもらった。
③そのため社長一家は、自宅もなくなり生活にも困るような状況になった。
④ところが、他の銀行の返済分が残っており、そういう状況下でも督促の電話が来る。
⑤生活資金にも困る状況なので、銀行に返すようなお金はもう残っていない。
というようなものでした。
※ちなみに、担保提供者のことを「物上保証人」と呼びます。
昨日(14.08.27)の読売新聞朝刊の一面にこんな見出しが出ていました。
「保証人意思確認を義務化」
と。。。。
「銀行に家を取られた」という話とは少し異なる部分もありますが、事情もよくわからずに融資の保証人になる方もあるため、「保証内容を理解して保証人になるという意思を明確に記録化しておく」というルールを法定化しようとする動きのようです。
ひょっとしたら、この手の記事はスルーされる方も多いかもしれませんが、少し説明しておきましょう。
「保証人として督促される時は、あなた以外に返す人がいない」ということですから、後学のためにも勉強しておきましょう。
1.何のことなのか?
①記事を引用すれば、「法相の諮問機関「法制審議会』の民法部会は26日、債権に関する規定の抜本改正案を大筋で了承した。融資の保証人になる際の意思確認を厳格化するほか。。。。。」という中の一節です。
②「銀行などによる中小企業への融資に関して、第三者の保証人が予想以上の保証を求められて生活破綻に追い込まれるケースがあることから、公証人による保証意思の確認を義務付けた。」ということのようです。
③つまり、「銀行や貸金業者が中小企業などに対する融資の際に求める個人保証の見直しは、気軽に保証人になったことで想定外の多額の借金を負うケースが絶えないことが背景にある」ようです。
2.具体的には何のことなのか?
①融資した企業が業況不安やあるいは倒産した場合には貸出金の返済が滞りますが、その時には融資の保証人や担保提供者から回収することが多々あります。
②保証を求められると(保証履行をすると)、保証人の中には、
「よくわからないまま印鑑を押した結果、『人の借金』で生活が破綻してしまった」などという事例が生まれてくることがあります。
③この「よくわからないまま印鑑を押す」ということがないように、「保証した事実を『公証人役場』で記録・明確化しておいてもらおう」という意味のようです。
3.銀行の現場ではどうしているのか?
少なくとも私がいた銀行では、保証人を取る場合には、
①原則、保証人に面談し内容を説明し保証の承諾を取ります。
②面談内容は、記録化します。
③契約書には、自署のうえ実印で押印していただき、印鑑証明書を徴求します。
④事後、内部監査で、「契約書に不備がないか」「保証意思の確認記録があるか」などがチェックされます。
多くの「銀行」では多分こんな感じだと思います。
4.保証人の方の受け止め方はどうか?
①保証金額については、「根保証」と「特定保証」の区別がつかない人も多いようです。
特に、一つの借入金額に着目されがちですが、
「根保証」とは、一定の保証枠(「極度額」といいます)の範囲での反復借入に保証をするものです。したがって、現在の借入がゼロになっても、新たな借り入れが起きてしまえば、保証枠(「極度額」)までの保証が必要です。
「特定保証」とは、借り入れの都度、その借入額について保証を行うものです。したがって、借入金が返済されれば、保証の額も返済の進行につれて減っていきます。ただし、利息債務は一定の範囲でついて回ります。
②保証人には二つのタイプがあります。
一つは、経営者などの役員等の人が挙げられます。
こういう人は、「経営上仕方がないので保証人になった」という側面もあります。
もう一つは、経営者の友人とか親戚という立場で「仕方なく保証人になった」という方々もいらっしゃいます。
こういう人は、「義理」とか「お互い様」というような側面があります。
この場合は「相保証」(あいぼしょう)と呼んで、お互いが保証人になりっこするようなこともよくあります。
5.「法制審議会」(案)の隘路
さて、「保証意思確認義務」が法定化されたとしても、
①役員等の経営関係者である保証人には適用がない。
※経営に直接関係のない保証人を「第三者保証人」と呼びます。
②「根保証」と「特定保証」の扱いが不明確なこと。
③銀行の多くは、「保証意思の確認」には厳格に取り組んでおり、保証履行保証人の生活破綻問題は「保証意思の確認」の問題ではないこと。
などの課題が挙げられます。
6.考えられる方策
①「保証するくらいならお金を貸してあげなさい」
・「保証履行」(保証が顕在化すること)は、企業破綻等のように借主の返済が滞った時に発生するものであり、主債務者からは取り戻せないケースが多いようです。また、元本だけでなく延滞利息も発生することを想定しておく必要があります。
であれば、安易に保証などせず、その分のお金を貸してあげたほうが損失(被害額)がわかりやすいといえます。
②短期間の借り入れ以外は、「根保証」を認めないこと。
・「根保証」とは、最大保証額の限度枠です。保証期間に借り入れが反復されたら、知らないうちに満枠になってしまいます。「借入金は減っていたはずなのに。。。。。」と思っていても、反復貸し出しが行われていたら、いつまでたっても保証額は減りません。
・特に、経営と直接関係のない「第三者保証人」の方には、この「根保証」というのはとてもわかりにくく、かつ「保証履行」時に割り切れないものとなります。
③経営者等の「役員という立場」で保証人になった場合は、役員等を辞めたら原則保証を免除することです。
ただし、モラルハザードの観点から、代表取締役の保証免除には一定の条件が必要かもしれません。
④「保証人になったせいで生活が破綻した」ということが問題になるのなら、「保証人になるということの意味」をもっと丁寧に教えるべきです。
・・・・そもそもこの借入金額を返せますか?
などという話をお聞きになったことはありませんか?
私も若い頃、ある企業の社長の奥様から、電話口で涙ながらに「銀行に家を取られた」と言われてしまったことがあります。
事業(ご商売)に一切タッチされていない奥様でしたから、こういう話が口をついて出たのだと思います。
実情は、
①どこかの銀行から融資を受けた(お金を借りた)。
②業況不芳で、融資金(借入金)が返済できず、融資の条件として社長の自宅(土地・建物)を担保に取っていたので、その家を処分して(もらって)融資金(借入金)を返済してもらった。
③そのため社長一家は、自宅もなくなり生活にも困るような状況になった。
④ところが、他の銀行の返済分が残っており、そういう状況下でも督促の電話が来る。
⑤生活資金にも困る状況なので、銀行に返すようなお金はもう残っていない。
というようなものでした。
※ちなみに、担保提供者のことを「物上保証人」と呼びます。
昨日(14.08.27)の読売新聞朝刊の一面にこんな見出しが出ていました。
「保証人意思確認を義務化」
と。。。。
「銀行に家を取られた」という話とは少し異なる部分もありますが、事情もよくわからずに融資の保証人になる方もあるため、「保証内容を理解して保証人になるという意思を明確に記録化しておく」というルールを法定化しようとする動きのようです。
ひょっとしたら、この手の記事はスルーされる方も多いかもしれませんが、少し説明しておきましょう。
「保証人として督促される時は、あなた以外に返す人がいない」ということですから、後学のためにも勉強しておきましょう。
1.何のことなのか?
①記事を引用すれば、「法相の諮問機関「法制審議会』の民法部会は26日、債権に関する規定の抜本改正案を大筋で了承した。融資の保証人になる際の意思確認を厳格化するほか。。。。。」という中の一節です。
②「銀行などによる中小企業への融資に関して、第三者の保証人が予想以上の保証を求められて生活破綻に追い込まれるケースがあることから、公証人による保証意思の確認を義務付けた。」ということのようです。
③つまり、「銀行や貸金業者が中小企業などに対する融資の際に求める個人保証の見直しは、気軽に保証人になったことで想定外の多額の借金を負うケースが絶えないことが背景にある」ようです。
2.具体的には何のことなのか?
①融資した企業が業況不安やあるいは倒産した場合には貸出金の返済が滞りますが、その時には融資の保証人や担保提供者から回収することが多々あります。
②保証を求められると(保証履行をすると)、保証人の中には、
「よくわからないまま印鑑を押した結果、『人の借金』で生活が破綻してしまった」などという事例が生まれてくることがあります。
③この「よくわからないまま印鑑を押す」ということがないように、「保証した事実を『公証人役場』で記録・明確化しておいてもらおう」という意味のようです。
3.銀行の現場ではどうしているのか?
少なくとも私がいた銀行では、保証人を取る場合には、
①原則、保証人に面談し内容を説明し保証の承諾を取ります。
②面談内容は、記録化します。
③契約書には、自署のうえ実印で押印していただき、印鑑証明書を徴求します。
④事後、内部監査で、「契約書に不備がないか」「保証意思の確認記録があるか」などがチェックされます。
多くの「銀行」では多分こんな感じだと思います。
4.保証人の方の受け止め方はどうか?
①保証金額については、「根保証」と「特定保証」の区別がつかない人も多いようです。
特に、一つの借入金額に着目されがちですが、
「根保証」とは、一定の保証枠(「極度額」といいます)の範囲での反復借入に保証をするものです。したがって、現在の借入がゼロになっても、新たな借り入れが起きてしまえば、保証枠(「極度額」)までの保証が必要です。
「特定保証」とは、借り入れの都度、その借入額について保証を行うものです。したがって、借入金が返済されれば、保証の額も返済の進行につれて減っていきます。ただし、利息債務は一定の範囲でついて回ります。
②保証人には二つのタイプがあります。
一つは、経営者などの役員等の人が挙げられます。
こういう人は、「経営上仕方がないので保証人になった」という側面もあります。
もう一つは、経営者の友人とか親戚という立場で「仕方なく保証人になった」という方々もいらっしゃいます。
こういう人は、「義理」とか「お互い様」というような側面があります。
この場合は「相保証」(あいぼしょう)と呼んで、お互いが保証人になりっこするようなこともよくあります。
5.「法制審議会」(案)の隘路
さて、「保証意思確認義務」が法定化されたとしても、
①役員等の経営関係者である保証人には適用がない。
※経営に直接関係のない保証人を「第三者保証人」と呼びます。
②「根保証」と「特定保証」の扱いが不明確なこと。
③銀行の多くは、「保証意思の確認」には厳格に取り組んでおり、保証履行保証人の生活破綻問題は「保証意思の確認」の問題ではないこと。
などの課題が挙げられます。
6.考えられる方策
①「保証するくらいならお金を貸してあげなさい」
・「保証履行」(保証が顕在化すること)は、企業破綻等のように借主の返済が滞った時に発生するものであり、主債務者からは取り戻せないケースが多いようです。また、元本だけでなく延滞利息も発生することを想定しておく必要があります。
であれば、安易に保証などせず、その分のお金を貸してあげたほうが損失(被害額)がわかりやすいといえます。
②短期間の借り入れ以外は、「根保証」を認めないこと。
・「根保証」とは、最大保証額の限度枠です。保証期間に借り入れが反復されたら、知らないうちに満枠になってしまいます。「借入金は減っていたはずなのに。。。。。」と思っていても、反復貸し出しが行われていたら、いつまでたっても保証額は減りません。
・特に、経営と直接関係のない「第三者保証人」の方には、この「根保証」というのはとてもわかりにくく、かつ「保証履行」時に割り切れないものとなります。
③経営者等の「役員という立場」で保証人になった場合は、役員等を辞めたら原則保証を免除することです。
ただし、モラルハザードの観点から、代表取締役の保証免除には一定の条件が必要かもしれません。
④「保証人になったせいで生活が破綻した」ということが問題になるのなら、「保証人になるということの意味」をもっと丁寧に教えるべきです。
・・・・そもそもこの借入金額を返せますか?
コメント 0