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「がん登録法」の使い道 [癌(がん)とつきあう法]

「がん登録法」(2013.12.6)が成立したそうです。

議員立法で成立した法律ですから国会議員の方の法案成立についての熱い情熱はいかばかりか。。。。

「国会がん患者と家族の会」のサイトを見れば、

今や国民の2人に1人がかかり、3人に1人が亡くなる病気である、がん。しかし、その治療のための情報整備と言えば、先進国の中でも特段遅れているのが実態です。」

「他の先進国並みに、国の責任において全数登録を義務化し、悉皆的なデータに基づいた分析、予防措置を含むがん対策、そして治療法の開発などができるよう法制化するのが、この「がん登録法案」プロジェクトの問題意識の出発点です。」

「作業チームは2012年11月からすでに10回開催しており、その間、患者団体の方、医療従事者、院内がん登録の担当者、地域がん登録の担当者、国立がん研究センター、関係省庁の方に出席いただき、様々なご意見をいただきました」

などと記してあります。

大所高所から議論されたようで、それはそれでいいことだと思うのですが、少しばかり違和感があります。


1.統計を整備することが目的化されていないか。・・・・なぜ「がん」だけ?

がんを含め何かの病気で苦しんでいらっしゃる方はたくさんいらっしゃるはずです。
なぜ「がんだけデーターを整備」するのでしょうか?

たしかに「がん」患者は多いのですが、他の難病はどうなのでしょうか?


2.「国民の2人に1人がかかり、3人に1人が亡くなる病気」という使い方は正しいのか?

この言葉は、「保険業界」の人たちがよくお使いになります。
皆さんの周囲を見渡した時、確かに「がん患者」や「がんでお亡くなりになる方」は多いのですが、実感として「二人に一人」「三人に一人」というのが浮かんでこないはずです。
本当なのでしょうか?

少なくとも「3人に一人ががんで亡くなる」というのは、使い方が間違っています。

厚生労働省が公表している統計の中に「人口動態総覧」というのがあります。
この統計はかなり正確です。

その中に、「死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)」というのがあるのですが、
平成24年の数字で見れば、 ((  )内は平成23年の数値)

A.総死亡者数 1,256千人 (1,253千人)

B.悪性新生物(がん)を原因とする死亡者数  361千人 (357千人)

C.悪性新生物原因とする死亡率 (B/A ) 28.7% (28.5%)

これは、
「1年間にお亡くなりになる人が125.6万人(A)いて、その中でがんが原因で亡くなる人が36.1万人(B)で、その死亡率を計算すると、28.7%になる。」
ということのようです。

つまり、1年間で見ると、100人の死者のうちがんで死んだ人が28.7人ということを、「3人に一人ががんで死ぬ」と言われているのかもしれません。

よく考えると、多くの方々が高齢で寿命になってお亡くなりになっているのだと考えたら、「周りにいる人たちの3人に一人ががんで死んでいる」という実感がわいてこないのです

この理解を踏まえたうえで、がんの死亡率をイメージしていただきたいのです。

なお、罹患数はよくわかりません。


2.「がん診療連携拠点病院」のデーターは統一・整備されているのでしょうか?

日本には「がん診療連携拠点病院制度」というのがあり、H24年4月1日現在では、
47都道府県(397カ所)
・都道府県がん診療連携拠点病院: 51病院
・地域がん診療連携拠点病院 :344病院
・国立がん研究センター中央病院及び東病院
が指定されています。

これらのデータは、統一整備されているのでしょうか?


私は、データーを整備することはとても重要なことだと思いますが、

①そのことだけが目的化していいのか

②いっそのこと、重大疾患すべてのデータを同じ土俵で整備したほうがいいのではないのか

と素朴に思います。


重要なのは、

①定期的な健診の実施

②早期発見

③拠点病院を通じた治療の実情

④がんとの付き合い方

がきちんと公表され、「がんでの肉体的な苦しみ」「経済的な負担」を緩和できる制度を見極めていくことも大切です。

ちなみに、就労中にがんに罹患してしまうと、「働きづらくなる」という問題もあります
こういう問題も含めて、引き続き議論されていくことを期待します。


保険業界の人にがんのことを教えてもらうような実態は、お粗末かつ危険です。

保険を売る「おっちゃん」や「おばちゃん」にしたり顔でがんの話をしてほしくない!という現実もあるのです


CIMG1714-01.JPG


※(参考)病気の患者数の把握の仕方はとても難しいのではないかと思います。
・一人の人でも、いろいろな病院を受診していること。
・病院に行かない人もいる。
ことを考えると、「健康保険」の利用調査でもしないと、なかなか峻別できないものではないでしょうか?

※※ 「がん登録法」だと思っていたら、新聞によっては「がん情報登録法」となっているものもありますね。




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