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コロナ以前から「宿泊客が減っている温泉地」のこと [旅紀行・県民性の謎]

新型コロナ感染拡大に伴う「都道府県境をまたぐ移動の自粛要請」が19日(金)から全面的に解除になりました。
観光地の皆様も一息つかれることではないでしょうか。。。。
私も「温泉地」へ行きたいなと思っているところです。


ところで、今年(2020年)2月のことでした。
地方の温泉地を訪ねたところ、そこの古刹のご住職から「宿泊客が減っているのです」と相談されました。

「新型コロナで海外からの観光客が減りましたからね」と言うと「コロナ以前から宿泊客は減少傾向が続いている」とのお話です。
それなりに有名な温泉地なことに加えて
●インバウンドブーム
●温泉ブーム
●知事以下行政の肝いりもすごい
状況下で「宿泊客の減少」というのはかなりの重症です。


そこで提案というか警告したのは、

1.「観光」という言葉を捨てること

「Sightseeing」という英語で考えると「何を見せるのですか?」「何を見てもらうのですか?」という答えが必要です。

当地を訪れるお客様はすべて「観光客」だと考えると、それなりに目的を持っているはず。
たとえば「温泉」「名所旧跡巡り」「グルメ」「くつろぎ」「健康確認」「知的好奇心の満足」等々
「観光」で儲けよう(商売しよう)とぎらついた地域は嫌われます。

●この地でどう時間を過ごすか?
●どういう巡路を考えるのか?
●何を「深堀」(重点)とするのか?
●「インスタ映え」ポイントはどこか?
というお客様ニーズに合わせたプレゼンスが必要です。
何よりもお客様は「相応の知識」と「わくわくする」期待感をお持ちなのですから。

この地域は知事以下「言葉の遊び」で観光客誘致を考えていらっしゃるのでリピーターが育たないのです。


2.「補助金」とか「行政が力を入れている」という言葉は幻滅を誘う

「歴史」や「自然」が育んだという言葉をお客様は好みます。
「補助金」=「官製」=「自立していない」
という印象を与えてしまいます。
補助金というのは「内輪」の話であり、お客様には関係のないことです。
「こんなことに税金を使っているから税金が上がるんだ」と思われてしまったらアウトです。


3.基本は「三つのK」

お客様は、こういうお気持ちではないでしょうか?

第一番のKは、「関心」です。 「興味」とも言います。
何事も関心を持ってみることです。
 ・・・・そもそも何らかの理由でここに来ようと思ったはずです。

第二番目のKは、「感動」です。「トキメキ」のことです。
やはり、そこには、どきどきわくわくすることがあるのです。
 ・・・・「思っていたとおりだった」「思っていた以上によかった」となればしめたものです。

第三番目のKは、「快適」です。「気持ちいい、気分がいい」ということです。

一目ぼれをしても、その恋心が持続することが必要です。
・・・・「また来よう」「誰かに話そう」というリピートに繋がります。


4.観光地は全天候型

天候が不順な(雨が多い)地方では「あいにくお天気が悪くて」と言いがちです。
ここのご住職も参拝客に「あいにくのお天気で」と声をかけていらっしゃいます。
結婚式のスピーチよろしく観光にも「ネガティブ」な言葉は禁句です。

雨の日なら古刹ならではの「佇まい」を楽しんでもらうことも必要です。
「森閑とした」「心が洗われる」と言った思い出を作ってあげましょう。
そして次こそは「いいお天気の日に来よう」というリピートする気持ちをお持ち帰りしていただくことが必要です。


5.「古刹を特別視」してしまったら人は行かない

修行場であるこの古刹ですから「険しい」「スリルがある」という雰囲気もありますが、それを前面に出してしまうとお客さんは偏ってしまいます。
団塊の世代(1947年(昭和22年)~1949年(昭和24年)生まれ)が高齢化していく中では、「お参りの上り下りがしんどい」意識が先行してしまうと嫌われてしまいます。
「修験者体験」を味わう程度に権威付けするほうが重要なような気がします。


6.歴史に合わせた蘊蓄や重みが必要

「見た見た」「行った行った」というまるで「白地図をマーカーで塗りつぶすような」観光地を目指すなら別ですが、リピータが続く肉厚な観光地とするには「歴史」や「信仰」の重みに身震いするようなストーリーが必要です。

当地はそういうわくわく感のある場所ですから「安売りしない」が基本です。
「観光」という言葉に踊り「古刹」の魅力を磨いていないのです。

「また来たい」「また来る」「今度は誰かを連れてくる」こそいい観光地なのです。



7.「きれいなトイレ」「バリアフリー」は鉄板

かつての「旅館」「ホテル」は「自宅より住環境がよい」というのが大前提でしたが、今は「布団」「風呂」「トイレ」「食堂」は自宅のほうが十分綺麗です。
お金を払ってもらうからには「住環境」の整備は最低限必要です。


8.「団体客」か「個人客」か

かつては「農協」「婦人会」「青年団」「企業親睦会」で潤っていたが、昨今は「老人会」「インバウンドの団体」がようやく置き換わってきたというのが実情。
しかし、「団塊の世代」の高齢化や水もののインバウンド需要を考えると「個人客」を侮ってはいけない
「働き方改革」は少人数旅行を増やすはず。(休暇が交代制になる)
想定しないところから客は来る
海外の個人客は「お金持ち」「リピーター」「勉強家」が多い。


9.宿泊客か通過客か・・・・滞在時間を延ばす

「宿泊しない客」「車中泊」の客も多い。
この人たちにいかにお金を落としてもらうかも重要。

①着物、修験者コスプレ
今、インバウンドを中心に「レンタル着物」がブーム。

1セット(含む髪、小物)で5,000円+小物オプションが相場。
中国人、イスラム、黒人を問わず人気。。。。インタビューすると日本人もかなり多い。
中国人は家族で着る方々も多い

②「小腹」を満たす食べ物
「田楽」「玉こんにゃく」「たい焼き」等単価100円くらいの食べ物がほしい。
※在庫にならない匂いのするものが人気

③「古刹」に興味のない客の長時間滞在を
高齢化はスルー化やめんどくさいことは避ける傾向がある一方で、本物(経、写経、護摩、仏像等々)を好む客も多


10.資金調達はクラウドファンディング

そもそも神社仏閣の「浄財」「寄進」というのはクラウドファンディングの原型です。
クラウドファンディングとは、不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことです。
方法論(やり方)は役場に研究してもらい、伽藍の整備資金の調達を行うこともやらなければいけません。
信心の魅力を磨かずに「補助金」に頼るようなスタンスが観光地の勢いを削いでしまいます。


11.見てもらいたいのは「どこ?」「なに?」

皆さんが「見てもらいたいもの」「来てほしいところ」を線で結ぶ必要があります。
いわゆる「導線」を明確にする
そうすると、お客様は勝手に動き回るようになり新しい「動線」ができます

ご住職のお話を聞いていてつくづく思ったのは「お話がアバウトすぎる」ということ。あまり詳しくない私がいろいろと質問をすると「どうしてそれをご存じで」と聞き返されました。
居合わせた「地元の方」も「そんな話は初めて知った」状態です。

魅力は意外と深堀できるものですが、「行政の言葉の遊び」がこの古刹を軽いものににしてしまったようです。
知事が一言しゃべるとマスコミが追随するような土地柄では全国区にはなれません


12.「花」は季節を選ばない

この観光地には花が少ない印象です。
「花」はリピーターを生むにもかかわらずあまりにも軽視し過ぎです。
この県の知事がそういうことに無関心なこともあります。
また住民の皆さんも「直接お金を生まない」と思い込んでいらっしゃるようです。
ですからこの地域はなんとなく「暗い」感じがしてしまいます。


13.宣伝(広報)のやり方

海外向けは県などの行政、国内は来た客の評判という風に地元がお金を使わないことを考える。
来た客がSNSで宣伝してくれるのがベター(やらせはつまらない)
昨今のマスコミの「いいところ情報」には新鮮味がありません。
思い切って「ここはよくない」だから「あなたにいい所を発見してほしい」とでもアピールしたほうがまだ興味がわきます。


14.企業を使う・・・転勤族は都会の人・宣伝マン

「働き方改革」は少人数旅、独り旅を増やします
なぜなら交代で休みを取る人が増えるからです。
「宿坊」「ユースホステル」のような泊まり方も好まれてきます。
そこには「泊食分離」「泊湯分離」が生まれてきます。

また、東京などの大都市に本社がある企業の支店長は「地域貢献」という使命(業務ポイント)があります彼らが「社内報」等で社内に宣伝してくれるように仕向けることです。
まず「支店の慰安旅行」「支店社員の家族旅行」を呼び込むことが必要です。


15.行政は定番広報を

●観光客が撮った写真を公募してカレンダーづくり(参加型を前面に)
●全国の郵便局のカウンターはポスター張りを有料でやっている
●東京都庁には全国の観光案内コーナーがある
●宣伝は知事のためではなく地域のため(知事が有名になるだけの宣伝ぶりの県もあります)
タレントが知事になるのはいいが知事がタレントになってはいけない


16.観光客はどこから来てどこへ行くのか

「自県」内で取り込むのか?「他の観光地」とコラボレーションか?を踏まえること。
ご住職とお話ししていて感じたのは観光客は「ここにしか来ない」と考えていらっしゃるということです。
「この地」だけで観光客を呼ぶには「浅い」と言った印象が残ってしまいます。
また「教養」「芸術」を求める客は多いにもかかわらず、知的満足に訴えるお話が少なすぎます


17.観光客の財布の中身は同じ

●交通費
●宿泊費
●食費
●土産物代
●滞在遊興費
のどこにお金を使わせるかが勝負所

「交通費」にお金がかかる人はリピートしない
近場のリピート客は大切に
東京の人は「呼んでも来ない」し、「呼ばなくても来る」
地元及び近隣各県の客を狙う。
知事やマスコミの言葉の中には「東京」という言葉が主役です。
「交通費を考えたらそんなには来れないですよ!」と説明しておきました。


18.ハサップ(HACCP)とハラル

HACCPとは「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」という言葉の略語で、食品を製造する際に安全を確保するための管理手法のこと。
「危害分析重要管理点」と訳されています。
ジビエ料理にはハサップがあると強い

地元の方も含めかなり多くの人に同じような値段の「牛肉」と「鹿肉」と「猪肉」が目の前に出されたらどの肉を食べるかと聞いてみました。
多くの方が迷うことなく「牛肉」とお答えになるはずです。


ハラル(ハラール HALAL)イスラム法上で食べることが許されている食材や料理を指します。
イスラム法の下では豚肉を食べることは禁じられているが、その他の食品でも加工や調理に関して一定の作法が要求される。この作法が遵守された食品で、イスラム教では豚肉そのものだけでなく、豚肉から抽出したエキスが含まれる調味料やスープ、豚肉由来の加工食品であるハムやソーセージ、豚の脂が含まれるゼラチンを使ったデザートなどを口にすることも禁止されています。
さらに、過去に豚肉を調理した調理器具や食器などもNG。アルコールにも注意。
ということがあるようですが、ご住職たちは「ハサップ」も「ハラル」もご存じありませんでした。
あまりにもやみくもすぎます。

「多様性の時代」に配慮することも必要。



19.「非正規」では人手不足は続く

「社会保険のある職場」を目指さないと若い人は定着しません
「あなたの子どもさんを働かせたいか」が考え方の基本。

こういうことも意識になかったようです。
安定した雇用の場であるところに観光の質が高まる秘訣もあるのです。



さてさて、少しは参考になりましたでしょうか。
こんな話を2月にしてきました。
今なら「新型コロナ」という制約からも抜け出す工夫が必要です。

皆さんが新型コロナ対応でテレビで垣間見た知事の姿の中には「ただの目立ちたがり屋」の方もいらっしゃるのです。
こういう知事の下ではおそらくマスコミ受けやSNS人気は高いが住民の生活の課題は解決しないという難題が隠れているはずです。


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